「遠き山に日は落ちて」はクラシックだった!意外と知らないあのメロディのルーツ

夏の高原の夜、キャンプファイヤーをみんなで囲んで、みんなで歌ったり踊ったり、みんなと遊んだり...。

 

筆者が小学生の時に行った林間学校の思い出です。20年近く前なのであまりはっきり覚えていませんが、みんなで火を囲んで歌った「遠き山に日は落ちて」という歌がすごく印象に残っています。教科書にもキャンプファイヤーの挿絵とともに載っていたので、きっとキャンプファイヤーの定番曲なんでしょう。

 

そして筆者は、小学校を卒業してしばらくした頃に衝撃の事実を知ることになります。それは、「遠き山に日は落ちて」が実はオーケストラのための曲で、本当は歌詞がない音楽だということでした。

 

このように、当たり前のように歌われている歌が実はクラシック音楽由来だった、という曲はたくさんあります。この記事では、「あの曲、あのフレーズも、実はクラシックだった!」という曲をご紹介していきます。みなさんはいくつ知っているでしょうか?

「鼻から牛乳~」の元ネタ「小フーガト短調」

小学生の定番替え歌「チャララ~鼻から牛乳~♪」。地域によって多少の誤差はあるかもしれませんが、全国区と言っていいほど何故か超有名な替え歌です。筆者も散々歌いました。

 

そんな「鼻から牛乳~♪」も、実はゴリゴリのクラシック音楽。元ネタはJ.S.バッハの曲「フーガト短調」というオルガンのための曲の冒頭です。通称「小フーガト短調」と呼ばれ、非常に緻密に設計・作曲された偉大な曲であると言えます。

 

ちなみにこの曲をほぼ全編替え歌にしてしまった曲「小フーガハゲ短調」という曲も存在します。文字通りハゲについて歌った曲で、曲の雰囲気も相まって何とも言えない哀愁が漂う曲になっています。

 

運動会の定番曲!「天国と地獄」

こちらは歌の曲ではありませんが、誰もが聞いたことがある運動会の定番曲です。平成初期には「カステラ一番、電話は二番~」という替え歌でCMでも歌われた、非常に有名な曲です。

 

この曲は喜歌劇「天国と地獄」の序曲が出典になっています。「天国と地獄」は、ギリシャ神話の「オルフェウスとエウリディーチェの黄泉がえり伝説」を面白おかしくオペレッタに仕立て直したもので、作曲はオッフェンバックというフランスの作曲家です。

 

ちなみに、運動会ネタでは他にも「歌劇『ウィリアム・テル』序曲」(ロッシーニ作曲)、「道化師のギャロップ」(カバレフスキー作曲)、「トランペット吹きの休日」(アンダーソン作曲)など、クラシック音楽由来の曲がたくさんあります。良かったら是非聴いてみてください。

血圧測定と言えばこの曲?「ジムノペディ第1番」

市立病院に行くと、ロビーで必ず聞こえるゆったりとしたピアノの曲。音の出所を探すと、高確率で血圧測定の機械から流れてきています。

 

この曲は「ジムノペディ第1番」という曲で、フランスの作曲家サティの作品です。全部で3番まである組曲で、第1番には「ゆっくりと、苦しみをもって」という指示が書かれています。

 

「ジムノペディ」という言葉は、古代ギリシャの祭典「ギュムノパイディア」に由来していると言われています。どんな祭典だったかはコンプライアンス的にギリギリなので書けませんが、筆者としては曲想と直接関係があるようには思えませんでした。

 

結婚式の定番!2曲の「結婚行進曲」

「パパパパーン」というファンファーレから始まる曲と、「ファーシーシシー」から始まる重厚な雰囲気の曲。「結婚行進曲」と聞いて思いつくのは、ほぼこの2曲だけでしょう。前者はメンデルスゾーン作曲、後者はワーグナー作曲の作品です。

 

メンデルスゾーンの方は、シェイクスピア原作の劇付随音楽「夏の夜の夢」の婚礼のシーンで演奏される曲です。華々しい曲想が結婚式の雰囲気とよくマッチし、新しいポップな曲を使う傾向が強くなった今でも根強い人気があります。

一方ワーグナーの方は楽劇「ローエングリン」の婚礼の場面で歌われる合唱曲が出典となっています。こちらも荘厳な雰囲気が根強い人気を誇っており、オルガンだけで演奏される場合もあれば、聖歌隊によるコーラスを伴う場合もあります。

 

ただし、「ローエングリン」の方は、作品が悲劇的な結末を迎えることから敬遠されることもあるようです。それでも現在まで結婚式の定番曲として生き残っているあたりに、ワーグナーの書いた音楽の完成度の高さがうかがい知れます。

 

「ねーむれー、ねーむれー」もクラシック音楽!?

子守歌の代表格、「ねーむれー、ねーむれー」の歌詞が付けられたこの曲も、実はもともとクラシック音楽です。

 

原曲は歌曲王シューベルトの作曲で、曲名はそのまんま「子守歌」。通称「シューベルトの子守歌」とも呼ばれますが、あくまでピアノと歌唱によるドイツ歌曲。作曲当時、シューベルトは弱冠19歳でした。

 

元の歌詞は「Schlafe, Schlafe,~」で始まり、意味は日本語訳詞と同じ「眠れ、眠れ」。世界中で訳詞が作られ、実用的な子守歌として歌われているようです。

 

また、同じく子守歌として有名な「ゆりかごのうたをカナリアが歌うよ」で始まる曲がありますが、こちらは北原白秋作詞・草川信作曲による純国産の童謡です。

 

「遠き山に日は落ちて」の元ネタ!

冒頭で触れた「遠き山に日は落ちて」。この曲は、チェコを代表する作曲家・ドヴォルザークの交響曲第九番「新世界より」の第2楽章の主題を原曲としています。副題の「新世界より」という言葉は、作曲当時滞在していた”新世界”アメリカから故郷へ向けて、という意味を込めてつけられたといいます。大阪の某繁華街ではありません!

 

ドヴォルザークの死後、この「新世界より」第2楽章の旋律に英語の歌詞が付けられ、「家路」というタイトルで歌曲として発表したのを皮切りに、日本にも輸入されて数多くの日本語訳詞で歌われてきました。その中でも特に有名なのが、堀内敬三の詞による「遠き山に日は落ちて」で、教科書にもこの歌詞で載っています。

 

元ネタの交響曲でこの旋律を演奏しているのは、「イングリッシュホルン」と呼ばれる木管楽器です。「ホルン」という名前が付いていますがオーボエの仲間で、オーボエより低い音を出せる楽器です。素朴でどこか懐かしい響きが、この旋律とよく合っていますね。

 

ちなみに、同じくキャンプファイヤー定番曲として有名な「燃えろよ燃えろ」はフランス民謡を元にしています。また、「今日の日はさようなら」は子供向けキャンプ事業を運営する財団法人の職員によって作曲された正真正銘のキャンプソングなので、クラシックとは関係がありません。

「白戸家」のCMソングはあのバレエ作品!

携帯電話事業の大手ソフトバンクのCMシリーズ「白戸家シリーズ」は、2007年の放送開始以降400種類以上を制作・放送してきた長寿CMです。シリーズの多く、リビングのシーンで流れるほのぼのとした可愛らしいBGM、これも実はクラシック音楽です。

 

ロシアの作曲家チャイコフスキーによるバレエ「くるみ割り人形」から「葦(あし)笛の踊り」という曲が用いられています。クリスマスプレゼントとしてもらったくるみ割り人形が実は呪われていた王子様で、主人公クララに呪いを解いてもらったお礼にお菓子のお城で各国による歓迎を受け、その中の「フランスの踊り」がこの「葦笛の踊り」として知られています。

 

「くるみ割り人形」には他にも有名な曲がたくさん含まれており、しかもどれも名曲で、物語も子供から大人まで楽しめる作品です。上演回数も映像作品の数もかなり多く、バレエ初心者にもおすすめです。

 

あの映画音楽も!?「2001年宇宙の旅」

約50年前の本格SF映画「2001年宇宙の旅」。筆者は平成生まれのため詳しくは知りませんが、それでも冒頭場面の映像とその壮大な音楽はよく知っています。それだけ有名なこの場面の音楽も、実はクラシック音楽なのです。

 

作品名は交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき(ツァラトゥストラはこう言った)」。ドイツロマン派を代表する作曲家リヒャルト・シュトラウスによる作品で、「神は死んだ」という言葉で有名なニーチェによる同名の小説からインスピレーションを受けて作曲されたと言われています。

 

交響詩とは「管弦楽による自由な形式の標題音楽」のことで、つまり「何かしらのテーマをもって作られたオーケストラ作品」のことをいいます。この曲の場合の表題=テーマは「ツァラトゥストラはかく語りき」ですね。全曲を聴いても30分強なので、お時間あるときに是非聴いてみてください。

クラシック由来の曲の曲をまとめてみた!

このように、日常にはクラシック音楽由来のフレーズがたくさん隠れています。最近はYouTuberのフリー素材BGMとしても、クラシック音楽が度々用いられています。歌劇「フィガロの結婚」より「もう飛ぶまいぞこの蝶々」や、「ワルキューレの騎行」なんかがそうですね。若い世代の方がクラシック音楽に触れやすい環境かもしれません。

 

「これなんの曲だろう?」と思ったら、お手持ちのスマートフォンなどで調べてみてください。いい音楽と出会えるだけでなく、明日使える豆知識にもなります。是非お試しあれ。

 

 

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