音楽の最高学府「東京芸術大学」ってどんな所?

日本における最高学府といえば、もちろん東京大学です。赤門を目指して毎年多くの受験生が挑戦し、入学後も様々なジャンルの研究で、あるいは卒業後も日本屈指のエリートとして日本を牽引する、まさしく最高学府の名にふさわしい大学です。

それでは、音楽の最高学府は?

答えは「東京芸術大学」。きっと1度は見たことがある名前でしょう。
しかしその内情は、一般に知られているとは言えないのもまた事実。

ここでは、上野の森にそびえる最高学府「東京芸術大学」についてご紹介します。

音楽の最高学府?東京芸術大学ってどんなところ?

東京芸術大学は、上野公園の一角にメインキャンパスを持つ国立大学です。

音楽学部と美術学部の2学部を有する複合大学で、「音楽の」というよりは「芸術の」最高学府と呼ぶ方が相応しいかもしれません。

国内の国公立大学のうち、音楽学部を持つのは「愛知県立芸大」「沖縄県立芸大」「京都市立芸大」そして「東京芸大」の4大学のみ。非常に少ない国立の音楽学部ということで、日本中から学生が集まります。倍率は専攻によって異なり、さらに年々低下の傾向があるものの、音楽学部で1.5倍~5倍、美術学部では20倍近くまで上がることもあります。

指揮科などは数名の受験者に対し合格者0名の年もあるなど、非常にハイレベルな選考が繰り広げられます。

東京芸大のながーい歴史

東京芸大の歴史は非常に長く、前身の東京音楽学校を含めると100年を超える歴史があります。

明治維新を達成した明治政府は、西洋の列強諸国に追いつくため暮らしの西洋化を推し進めました。

その1つが音楽教育で、西洋のクラシック音楽を西洋式で教えるため、文部省に「音楽取調掛」を設置して西洋音楽の研究を進め、明治20年には東京音楽学校へ改称し設立しました。

その後は政治や戦争の影響を受けながら廃止や復活、学科の追加等を経て、戦後に東京美術学校と合併し東京藝術大学に名を改め現在へと至ります。

上野公園の一角には旧東京音楽学校の奏楽堂(いわゆる旧奏楽堂)が移設され、開学当時の趣を残しています。

この建物は「最古の洋風音楽ホール」として、国の重要文化財に指定されています。現行の奏楽堂は音楽学部内に建っていて、大学主催の公演などで頻繁に使用されています。

東京芸大ではどんなことが勉強できるの?

東京芸大音楽学部は基本的にクラシック音楽を勉強するための学校なので、一部の私立音大にあるようなポピュラー音楽に特化した学科は存在しません。逆に言うと、クラシック音楽はほぼ全楽器・専攻を網羅しています

また、東京芸大の大きな特徴として、邦楽科=日本の伝統音楽を専攻とする学科があることが挙げられます。雅楽や箏曲、日本舞踊などの和楽器の家元に生まれた学生も多く在籍しています。

これらの中には、副科として他の楽器専攻生でも履修することが可能なものもあるため、自身の音楽的知見を広げるには最高の環境と言えます。

音楽以外では外国語教育にも力を入れており、専門の研究センターが常設され、諸外国語の母国語話者が教師として在籍しています。世界に飛び立っていく学生たちの準備として活用されているようです。

音大で神輿!?東京芸大の不思議な文化

芸大生の話を聞いていると、「C年」「D年」という言葉が度々出てきます。しかも「シー年」ではなく、ドイツ語読みの「ツェー年」「デー年」。

これは階名である「ドレミファ」のドイツ語音名「C,D,E,F」に「1,2,3,4」と数字を振り当てて、1年生をC年、2年生をD年...と呼んでいるのだそうです。

筆者は首都圏の私立音大卒ですが、このような呼び方をするのは東京芸大生だけでした。

そして東京芸大ならではの文化もあります。毎年9月に開催される学園祭「藝術祭」では、音楽学部と美術学部がタッグを組み、巨大な神輿を作り上げます。

その完成度は非常に高く、芸祭期間中のパレード・展示を経て、翌夏に別の祭で利用されたり、地方自治体などが神輿を買い付けることもあるそうです。

芸大卒の一流音楽家たち!

東京音楽学校時代を含めると、非常に多くの著名な卒業生を輩出しています。旧東京音楽学校からは作曲家の滝廉太郎・中田喜・團伊玖磨・岡野貞一・大中恩・山田耕筰など、日本の音楽史から外すことのできない偉人たちの名前が並びます。

現行の東京芸術大学からも、戦後~平成のクラシック音楽界を支える超一流の音楽家が多数卒業しました。

演奏者として最も有名なのはフジ子・ヘミングでしょうか。一般にはミュージカル俳優の石丸幹二やピアニストの坂本龍一、コアなクラシックファンには芥川也寸志や三枝成彰、間宮芳生、小林研一郎、若杉弘が有名です。

全体的に、年代が下るにつれて卒業生が活躍するジャンルも広がっているようですが、いずれもクラシック音楽の徹底的な基礎訓練が下地になっています。

一般の方向けにもこんなのがあります

東京芸術大学は国立大学のため、他の国立大学同様キャンパス内への立ち入りが許可されています。校門脇の守衛室で手続きをすることで、学食や美術館など許可されたエリアへ立ち入ることが出来ます。それ以外は全面的に立ち入り禁止となっています。

現在は在学生や職員が持つICカードを機械にかざすことで入館できますが、学校関係者以外には発行されません。

一般の方向けに公開講座も開講しています。

申込必須の完全予約制ですが、幅広い年代に対応した様々な講座が用意されています。2019年度分はすでに申込終了していますが、2020年度分の情報は3月に公開予定となっています。芸大の中の様子に触れたい方には、公開講座への参加がおすすめです。

やっぱり芸大はすごいところ!

音楽の、そして芸術の最高学府・東京芸術大学についてご紹介してきました。

筆者の経験上、芸大生はなかなかのクセ者揃い。これも天才が集う芸大ならではの校風と言えそうです。

他の私立音大も急激な成長をみせていますが、入学時のポテンシャルはさすがの芸大といえるでしょう。

超一流の教授陣のもとでしっかりと勉強し、芸大ならではの経験をたくさんして、日本の、世界の芸術音楽を未来へ継承し、音楽の未来を切り開いていってほしいですね。

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