クリスマスといえばくるみ割り人形!バレエ音楽って?

クリスマスの定番クラシックと言えば「くるみ割り人形」です。華やかで楽し気な音楽が、ポピュラー音楽のクリスマスソングには出せない素敵な雰囲気を生み出します。

この「くるみ割り人形」、実はクラシックバレエの代表的な作品として知られています。クラシックバレエにはこの「くるみ割り人形」以外にも、親しみやすい素敵な曲が溢れています。

ここでは、交響曲にもオペラにも無い、バレエならではのロマンチックな世界をご紹介します。

そもそもバレエって何?バレエ音楽の基礎知識!

バレエを一言で言うと、「ダンスと身振りと音楽だけで演じられる演劇」と表現できます。普通演劇は台詞がありますし、歌劇の場合には歌詞があります。バレエには何とそれらの言葉がないのです!

 

もちろん台詞がないだけで筋書きはちゃんとあります。振付師、そしてダンサーは音楽と楽譜のト書き、台本などでどのような表情や表現、振付が相応しいかを考えて作っていくのです。

 

逆に言うと、同じオーケストラ付きの舞台演劇であるオペラと比べて、登場人物の心理描写やその場面の情景描写が、非常に緻密かつ繊細に作られているのです。もちろんダンサーの表現力を含む舞台上の動きを中心に鑑賞するのが正解ですが、音楽だけ取り出してみても、非常に完成度の高い作品が多いことは注目すべき点でしょう。

バレエ音楽の歴史をざっくりおさらい!

バレエ音楽について触れていく前に、少しだけバレエの成り立ちをおさらいしてみましょう。

 

現代のバレエは主に大劇場でオーケストラ伴奏と共に上演されるのが普通ですが、バレエは元々宮廷の広間で貴族たちによって踊られたものでした。15世紀~16世紀のイタリアの宮廷で流行したこの舞踏会は、イタリアからフランス王家に嫁いだ貴族女性によってフランスにも伝わり、爆発的な流行となりました。

 

イタリアで「バッレッティ」と呼ばれたこのダンスはフランス語で「バレ」と呼ばれ、これが現代まで続く「バレエ」の語源となっています。

 

このように貴族の社交の場としてバレエが発達してきたころ、同じく貴族が所有する宮廷劇場ではオペラの上演が始まりました。広間で踊られていたバレエは劇場向けのダンスとしてオペラに吸収され、その後18世紀半ばまで、バレエはオペラの一部を構成するダンスやダンサーという位置づけになりました。

 

ヨーロッパ各地の貴族たちは、パリを中心とするフランスの貴族からバレエをこぞって自国に持ち帰り、各地で上演が始まりました。バレエの専門家により「バレエを独立した舞踏演劇にする」ことが提唱された少し後、フランス革命によってフランスの舞台芸術は庶民の手に渡り、より自由な表現をするロマン派の時代へと突入していきました。

 

現在バレエ大国と呼ばれているロシアは、バレエを輸入したのが比較的遅かったこと、フランス革命のような大きな政治体制の変化が無かったことから、西ヨーロッパが流行り廃りを繰り返す間もずっと古いスタイルのバレエを貫いていました。

 

このことが独自の進化をもたらし、後のチャイコフスキーらによる優れたバレエ音楽が登場したことで、バレエ王国の地位は盤石なものになっていきます。

 

世界三大バレエをまとめてご紹介!

バレエを語るうえで絶対に外せない作品を3作品、ご紹介します。上演回数も多く人気も高い3作品、名付けて「三大バレエ」!なんといってもこの3大バレエ作品、全て同じ人によって作曲されたんです。

 

その偉大な作曲家こそ、ロシアが誇る天才チャイコフスキーです。ピアノ協奏曲や交響曲「悲愴」、大砲を楽器として用いる序曲「1812年」など、多方面で圧倒的な才能を発揮したチャイコフスキーですが、生涯で3作品だけ書いたバレエ作品全てが現代まで世界の大ヒット作として上演され続けています。

 

作曲された順に、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」そして「くるみ割り人形」。どれもタイトルだけは聞いたことあるんじゃないでしょうか?少しだけ解説を交えつつご紹介します。

白鳥の湖」は呪いで白鳥に変えられたお姫様と、悪魔に騙された王子の悲恋の物語。ハープとオーボエによる「白鳥のテーマ」は、誰もが聞いたことがあるであろう名旋律です。この作品はバッドエンド版とハッピーエンド版が存在するようですが、筆者的にはバッドエンドの方が物語として美しいような気がします。

 

眠れる森の美女」はディズニー作品と同様、呪いで100年眠り続けるオーロラ姫に王子様がキスして目を覚ますというお話。婚礼の場面で様々な踊りが次々に舞われる構成は、次作の「くるみ割り人形」にもみられる特徴でしょう。

 

くるみ割り人形」は、クリスマスにもらったくるみ割り人形が実は呪いで姿を変えられた王子様で、偶然その呪いを解いて感謝されたけど夢でした...という夢物語です。主人公が子供であること、そして非常にファンタジックな物語であること、ヨーロッパではクリスマスに子供たちを劇場に招待して上演することも少なくないようです。

 

「くるみ割り人形」は、前の2作と比べて圧倒的に聴きやすくキャッチ―な音楽が多いのが特徴です。「行進曲」「葦笛の踊り」「金平糖の踊り」「ロシアの踊り」「花のワルツ」などテレビやCMのBGMに採用されている曲も多く、子供だけでなく大人の方にも、初めてのバレエ鑑賞におすすめの作品です。

 

ロシア以外のバレエ音楽は?

ここまでチャイコフスキーのバレエ音楽3作品をご紹介しました。ロシアは他にも、「ロミオとジュリエット」や「シンデレラ」で知られるプロコフィエフ、超前衛的な「春の祭典」を作曲したストラヴィンスキーなど、バレエ王国の名に恥じない名作・名作曲家を数多く輩出しました。

 

ロシア以外に目を向けると、ノルウェーの作曲家ロヴィンショルドによって書かれデンマークで初演された「ラ・シルフィード」や、フランスの作曲家アダンによる「ジゼル」、同じくフランス人作曲家マスネの「マノン」などが挙げられます。

 

また、元々バレエ音楽として書かれたわけではない作品を再編しバレエに仕立て直した作品も数多くあります。

 

ビゼーの「カルメン」はオペラ作品、「レ・シルフィード」はショパンのピアノ作品をオーケストレーションしてバレエ音楽にしたものです。「若者と死」に至ってはバッハの「パッサカリアとフーガ」に振付を施したものです。これらは厳密には「バレエ音楽」とは言えないでしょう。

ロマンチックでドラマチックなバレエ音楽を聴いてみよう!

いかがでしたでしょうか?オーケストラやピアノ曲に比べて、触れる機会が少ないバレエ音楽ですが、有名な物語が題材となっている作品が多いので、クラシック音楽初心者にも聴きやすく親しみやすいのがバレエ音楽の魅力の一つでしょう。

 

もちろん舞台上での振付あってのバレエですからそれも鑑賞していただきたいですが、まずその第一歩として、バレエ音楽を音楽だけで聴いてみるのもおすすめです。この機会にぜひ、親しみやすくも奥が深いバレエ音楽に挑戦してみてください。

 

 

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