クラシック=オーケストラじゃない!「室内楽」の世界

「クラシック音楽ファン」を自称している方の多くは「オーケストラファン」であると感じます。

マーラーやベートーヴェン、ブラームスなどのドイツ音楽派、ドビュッシーやラヴェルなどのフランス音楽派など、それぞれの好みに合わせて日々オーケストラに触れているものと思います。

 

実は、オーケストラの誕生前から現代まで続いている、超伝統的な編成のクラシック音楽があるんです。

その名も「室内楽」。

名前の通り、室内で演奏するような小編成による音楽です。でも、演奏会場が小さいということは、人の目に触れる機会も少ないということ。

 

一方で、器楽奏者の多くが、学生時代に室内楽を学びます。また、オーケストラにおいて奏者が単体で注目されることはあまりありませんが、ソリストとして超一流の奏者の多くが室内楽の分野でも名演を残しています。

じゃあ室内楽ってどんな音楽なのでしょうか?

オーケストラファンこそ必見!「砂金の山」とさえ呼べる、小粒ながら珠玉の作品・演奏に満ち溢れた「室内楽」の世界をご紹介します。

室内楽って何?

室内楽は元々宮廷の広間などで演奏される小さな編成の音楽として発達しました。時代が下るにつれて楽器や作曲技法が進化し、それに合わせるように基本的な編成が確立しました。

現代では色々な編成が存在しますが、多くは3~7人程度の奏者によって編成されます。

2人の場合はその多くが「独奏+伴奏」となるため、厳密には室内楽とは呼びませんが、「2台ピアノ」などは室内楽として扱われることもあります。

また、室内楽最大の特徴として、指揮者を立てないことが挙げられます。

演奏も開始も終わりも、テンポの切り替えや全体のバランス感覚においても、目配せや合図で全てこなし、奏者それぞれのセンスによって補完します。そのため、奏者には非常に高い音楽的能力が求められます。

代表的な室内楽の編成!

室内楽にはいくつかの定型的な編成があります。使う楽器・奏者の数に応じて「三重奏」「四重奏」「五重奏」などと呼ばれ、主な楽器の種類をつけて「弦楽四重奏」「ピアノ三重奏」「木管五重奏」などと呼ばれます。

「弦楽三重奏」はヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ、「弦楽四重奏」はヴァイオリン2本とヴィオラ・チェロ、「弦楽五重奏」になるとさらにコントラバスが追加されます。

弦楽重奏は最も基本的な編成と考えられ、モーツァルトやベートーヴェンなど多くの著名な作曲家が名作の数々を残しています。

この弦楽重奏にピアノを追加すると、「ピアノ四重奏」(ピアノ+弦楽三重奏)などと呼ばれます。なお、ピアノ三重奏はピアノ・ヴァイオリン・チェロという編成です。シューベルトの「ピアノ五重奏曲『ます』」は教科書にも載っている代表的な曲です。

この他、比較的近代になってから「木管五重奏」(フルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ホルン)「金管五重奏」(トランペット2本・ホルン・トロンボーン・チューバ)という編成が生まれました。

名独奏者は名室内楽奏者?伝説的プレーヤーのドリームチーム!

周囲との調和が必要とされるオーケストラと異なり、室内楽にはより高い個々の音楽性が求められます。そのため、独奏者として超一流の奏者が集まって室内楽を演奏する機会も少なくありません。

 

最も有名な例が「カザルス・トリオ」でしょう。

戦前に活躍した伝説の名チェリスト・カザルス、指揮者としても大活躍したピアニストのコルトー、早熟の天才ヴァイオリニスト・ティボーの3人で組まれたこの三重奏団の演奏は、現代でも根強い人気を誇っています。音源が残っているので是非ご試聴あれ。

ちょっと不思議?現代の室内楽

前述の各種重奏が成立したのは古典派の時代。ハイドンやモーツァルトらによって形式が完成し、ベートーヴェンがさらに拡大、シューベルトやシューマン、ブラームスによって表現の幅が大きく塗り替えられました。

20世紀に入ってからは実験的な試みが数多く行われ、室内楽においてはまず変則的な編成が用いられました。

シェーンベルクによる「月に憑かれたピエロ」は、1人の歌手と、5人の奏者が持ち替えで8種類の楽器を使用します。木管2名、弦楽器2名、ピアノ1名となっており、編成は完全に室内楽ですが、調性感のない、いわゆる「無調」の技法によって、非常に不安定な音楽が作られています。

また、作曲家である、筆者の友人は「2台のハープとピッコロとティンパニー」のための室内楽曲を書いていました。どのようなサウンドになるのか想像もできません。はたして実演されたのでしょうか?

これぞクラシック!濃密な室内楽の世界を体験しよう!

いかがでしたでしょうか?室内楽はあまり聴いたことがないという方は是非CDショップや図書館、YouTubeなどの動画サイトへどうぞ。「Strings Quartet」など英語で検索すると出てきます。お近くのホールなど文化施設には公演のチラシが置いてあることもあります。

古今東西たくさんの作品がある室内楽。

演奏の音源を含めれば、その数は星の数と言っても過言ではありません。だからこそ、必ずお気に入りの曲・演奏に出会えると断言できます。まずは作曲家を変えながら何曲か聴いてみてください。きっとその濃密な世界に夢中になってしまいますよ!

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