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「交響曲」と聞いて、みなさんは何をイメージしますか?ことばとして耳にしたことはあるけれど実はよくわからない、長くて退屈、敷居が高い…そう思う方も多いのではないでしょうか。
でも、たくさんの音楽メディアがある中でこのページにたどり着いたあなたは、クラシック音楽や交響曲にかなり興味があるはず!
この記事が、そんなあなたのお役に立てば幸いです。
「交響曲」の語源
交響曲は英語で「シンフォニー(symphony)」と呼ばれますが、その語源はギリシャ語の「シンフォニア(symphonia)」にあります。「sym=共に」、「phonia=響き」で「完全な協和」という意味です。
では、「シンフォニア」とはなんでしょうか?
400年前のイタリアではオペラが大人気で、裕福な市民たちはこぞって劇場に足を運び、歌やバレエ、そして豪華な美術が彩る舞台に熱狂しました。
現代の映画やコンサートと同じように、開場してから開演までは時間があります。そこで、開演前のワクワク感をより一層楽しんでもらうため、これから上演されるオペラのいいとこ取りをした短いダイジェスト曲を演奏していました。これが「序曲」です。今で言う、映画の予告編のようなものですね。
イタリアでは、このオペラの序曲のことを「シンフォニア」と呼んでいました。そこからしばらくして、作曲家サンマルティーニが、オペラの序曲だけを集めて演奏会用の作品として上演し始めたのです。そして、後に演奏会用の作品としてのシンフォニアは、交響曲と呼ばれるようになりました。
諸説ありますが、一般的にはこれが交響曲の成り立ちと言われています。
交響曲は「オーケストラ」のための音楽!
主に、4種類の弦楽器(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス)・4種類の木管楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット)・4種類の金管楽器(ホルン・トランペット・トロンボーン・チューバ)・そして打楽器で構成される大規模な楽団を「オーケストラ」と呼びます。
現代ではすっかり演奏会のための音楽を演奏するイメージが定着したオーケストラですが、はじめからそうだったわけではありません。
およそ500年前のヨーロッパで、今とほぼ同じ形の弦楽器が使われ始めましたが、そのころは、力のある貴族がそれぞれお抱えの演奏家や楽団を持っていて、自宅でのティータイムにミュージック・ライブをして貴族同士で楽しむ、というのが一般的でした。
しかし、今から300年ほど前、市民革命がおこって貴族の力が弱くなったことをきっかけに、芸術は市民の手が届くものになります。貴族同士の遊びではなく、市民が純粋に音楽を楽しむことを目的としたオペラの公演やオーケストラの演奏会が各地で行われるようになりました。
それからしばらくして、オーケストラが主役に躍り出たのです。
つまり「交響曲」は、音楽そのものを楽しむために生まれた「オーケストラのための長編作品」なのです。
余談ですが、「吹奏楽とオーケストラって何が違うの?」という質問もよく耳にしますね。オーケストラは上記の通り弦楽器と管・打楽器で演奏されるのに対して、部活動でおなじみの吹奏楽には弦楽器が入りません。吹奏楽はもともと軍隊のための音楽ですから、戦場でシグナルとなったり兵隊のやる気を高めたりするためには、壊れにくくて遠くまで音が届く管楽器が適していたのでしょう。
交響曲の「楽章」=本の章立て
分厚い本には、内容の区切りごとに小見出しが付いていて、長い本の中で違った役割を果たしています。それぞれの章が独立しながらも互いに関わりあって一つの本の内容を作っています。1冊の本に見出しがなかったら、読むのがちょっぴり大変になってしまいますが、章立てがあることによって内容がより分かりやすくなりますね。
それと同じように、ほとんどの交響曲は「楽章」と呼ばれるセクションに分かれています。多くの場合、ひとつのセクションを終えてひと息ついてから次のセクションに移る、というように続けて演奏されます。
↓楽章に関する詳しい記事はこちら↓
いまさら聞けない「楽章」って何のこと?
また、交響曲における各楽章はそれぞれ違ったキャラクターを持っています。そのキャラクターの違いから、4つの楽章は「起承転結」、「急・緩・舞曲・急」などと表現されます。
それぞれの楽章の長さは作品によってまちまちですが、全部で4楽章、30~50分の作品が多いです(中には2つや3つ、5つの楽章をもつ交響曲もあります)。「そんなに長い曲、とても聴けないや…」と感じる方は、有名なメロディがある・好きな楽器が目立つ、など、聴きやすい楽章だけ少し聴いてみるのがオススメです。
「ちょい聴き」をしているうちに、全曲通して聴いてみたくなる、お気に入りの交響曲がきっと見つかりますよ!
交響曲の生みの親は誰?
最後は、主に交響曲を「完成させた」と言われる3人の作曲家、
・ハイドン
・モーツァルト
・ベートーヴェン
をご紹介します。
皆さんの小学校の音楽室の壁を思い出してみてください。白いモフモフのかつらをかぶった作曲家が、いかにも偉そうな感じで並べられてはいませんでしたか?
彼らが死後400年経ってもなお、異国の小学校の教室に肖像を飾られているのにはそれ相応の理由があるのです。
・F.J.ハイドン
18世紀オーストリアの作曲家。全部で100曲以上の交響曲を作曲し、その功績は「交響曲の父」と呼ばれるほど。他にも、小さい編成の「室内楽」、全てのジャンルの作品を合わせると、その数はなんと1000にものぼると言われています。
実は、当時の演奏に使われていた楽器は現代のものと少し作りが異なり、「古楽器」と呼ばれるのですが、近年では当時用いられていた楽器を使った「古楽器オーケストラ」の演奏会も行われています。ハイドンの時代の響きに思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
・W.A.モーツァルト
18世紀の神聖ローマ帝国に生まれ、ハイドンと親子ほどの年齢差がありながら、深い親交を持っていたと言われるモーツァルト。優雅で端正な作風のため、現代もBGMなどでもよく彼の作品を耳にします。彼もハイドンと同じく多作で、特に有名な第39番・第40番・第41番の3つの交響曲を合計6週間で書き上げてしまったという信じられないエピソードの持ち主です。
・L.V.ベートーヴェン
ハイドン、モーツァルトが作り上げた交響曲の型を、より大規模に、より芸術的に完成度を高くしたのがベートーヴェンです。ちょうど政治の仕組みの転換点とも重なり、彼の作品は音楽が貴族のためのものから市民のためのものへと変わっていったことを象徴しています。冒頭の「ジャジャジャジャーン」で有名な交響曲第5番「運命」や、年の瀬に日本各地で演奏される交響曲第9番「合唱付き」など、一度は耳にしたことがある曲も多いのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
交響曲という名前の由来、編成、形式そして歴史など、盛りだくさんでお届けしましたが、交響曲の魅力はまだまだ語り尽くせません!
気になった項目はぜひ詳しく調べて、お気に入りの一曲を見つけてみてくださいね。