いまさら聞けない「ソナタ形式」って何?

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ソナタ」という言葉を聞いたことはありますか?クラシック音楽ファンなら、ほとんどの方が聞いたことがあると思います。クラシックのオムニバスCD、コンサートのチラシなどでも曲のタイトルや副題としてよく見かける言葉です。

しかし、「ソナタ」、とりわけ「ソナタ形式」という言葉の意味を正確に答えられる人はいるでしょうか?もしかしたら、専門教育を受けたプロの奏者や学者でもない限り、難しいかもしれません。

逆に言うと、この「ソナタ形式」の意味を知るだけで、「ソナタ」の楽しみ方は一気にプロ級にまで押し上げられちゃうんです!

ありふれた言葉だけに、意外と知らない。そんな音楽用語「ソナタ形式」について、ご紹介していきます。

いまさら聞けない!そもそもソナタって何?

「ソナタ」は、イタリア語で「奏でる」という意味の「sonare」が変化した「sonata」が語源です。一般的に「ソナタ形式を持つ器楽曲で、多くは4楽章形式からなる」という定義がありますが、元々は器楽で奏でる音楽を広く「ソナタ」と呼んでいました。

時代が下るにつれて段々形式化されていき、現代では「ソナタ」は「18世紀古典派以降に成立した、第一楽章がソナタ形式で書かれた器楽作品」のことを指します。

古典派より前のソナタは「教会ソナタ」や「世俗ソナタ」と呼びますが、ソナタ形式成立前なので当然ソナタ形式は含まれません。

なお、多くのピアノ初級者が勉強する「ソナチネ」という教則本がありますが、これは「小さいソナタ」の意味で、次の項で解説する各要素が非常に小さい物を「ソナチネ」と呼びます。

ソナタ形式の構造をざっくり解説!①提示部

「ソナタ形式」というと専門的で難しい気がしますが、実はそうでもないんです。構造を大まかに分けると、いわゆる「3部形式」になります。言い方を変えると「A-B-A'」、つまり1曲の中で最初と最後はほぼ同じ音楽、真ん中に異なる調子の音楽がきます。

専門的には、「A」を「提示部」、「B」を「展開部」、「A'」を「再現部」と呼びます。意味は読んで字の如し。曲のテーマ旋律である主題を「提示」し、それを「展開」し、「再現」させて終わり。簡単ですね!

提示部で提示する主題は、主に2種類。それぞれ「第一主題」、「第二主題」と呼び、これらの調性関係(キーの高さ)も一部の例外を除き決められています。高さが違うだけだったり、全く違う旋律だったりと、作曲者が工夫するポイントの一つでもあります。

古典派の時代には、この提示部はリピート記号によって繰り返し演奏する指示が書かれていることがほとんどです。これには、「主題をより強調し、印象付ける」という意図があると言われています。

なお、第一主題の前に「序奏」と呼ばれる前奏が入ることもあります。これは作曲家の任意で入れなくてもいいものですが、規模の大きい曲には序奏が取り入れられるケースが多いようです。

ソナタ形式の構造をざっくり解説!②展開部

展開部では、提示部で示された2つの旋律を素材として用いて音楽が展開していきます。多くは旋律の要素を分解したり、組み合わせたり転調させたりして発展させます。前述の2つの主題をそれぞれ「起」「承」とすると、展開部は「転」にあたります。

展開部では主題を用いたフーガなど、別の音楽形式を引用することもあります。それにはより綿密な設計が必要となり、いわば作曲家の腕の見せ所でもあります。

こうして展開させた音楽を次の「再現部」に持っていく方法にも、作曲家の技法が問われます。音楽のクライマックスがこの変わり目から作られることも多く、緊張感を高めるような音楽によって再現部への期待値を高めていきます。

ソナタ形式の構造をざっくり解説!③再現部

展開部終盤で高められた緊張感から、元の主題に戻る部分を「再現部」と呼びます。起承転結の「結」にあたる部分ですね。提示部とほぼ同じ進行をしますが、最後まで全く同じでは無限ループに陥るので、どこかで終曲に向かわなければなりません。

終曲に向けて分岐した部分を、専門用語で「コーダ」と呼びます。これは時代や作曲家によって特徴や長さは異なります。小規模なソナタではコーダは置かれず、終わらせるための少しの変更で済まされることも少なくありません。

「ソナタ形式」を用いた楽曲をご紹介!

最も代表的なのは「ピアノソナタ」でしょう。モーツァルトやベートーヴェンなどはもちろん、古くはスカルラッティやハイドンから20世紀以降の作曲家まで、非常に多くの作曲家が作品を残しています。第三楽章の「葬送行進曲」で有名なショパンのピアノソナタも、もちろん第一楽章はソナタ形式です。

ヴァイオリンやチェロなどのためのソナタも存在しますが、この場合は「独奏楽器+ピアノ」、または「独奏楽器のみ」の場合のみ「〇〇ソナタ」などと呼称します。

それでは「独奏楽器+オーケストラ」でソナタ形式の楽曲は?そう、「協奏曲」です。多くの協奏曲は第一楽章に「ソナタ形式」を置いています。メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」も、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲」も、ソナタ形式です。

↓協奏曲に関する詳しい記事はこちら↓
いまさら聞けない「協奏曲」って何?

ちなみに、「オーケストラだけ」で「4楽章形式」かつ「第一楽章がソナタ形式」のものを、交響曲と呼びます。もちろん例外もありますが、例えば年末恒例のベートーヴェンの「第九」交響曲も、第一楽章はソナタ形式を用いています。

また、モーツァルトなどの古典派オペラの中にも、序曲にソナタ形式を用いることがあります。一番有名なのは「フィガロの結婚」序曲。短いながらよくできたソナタ形式の楽曲なので、ソナタ視聴初心者はこの曲から入るのもいいかもしれません。

「ソナタ形式」についてざっくり解説してみた!

ここまで解説してきましたが、要は「3部形式であること」、「メインの旋律は2種類」この2点だけ知っていれば大丈夫!それだけでソナタの楽しみ方が一気に広がります。

その神髄は「フーガ形式」と並ぶ「音の造形美」だと言えるでしょう。先人たちの工夫の結晶であるソナタ形式の作品をぜひ聴いてみてください。膨大な作品が残されているので、きっとお気に入りの1曲に出会えると思います。

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