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オーケストラ作品を鑑賞する時、交響曲と並んで必ず目にするのが「協奏曲」です。モーツァルトやショパン、チャイコフスキーなど、時代や国籍を超えてたくさんの作曲家が協奏曲を残しています。
では、協奏曲と交響曲って何が違うんでしょうか?そもそも協奏曲って何?そんないまさら聞けない「協奏曲」に関する疑問にお答えします。
協奏曲って何?
協奏曲は、文字通り「協力」して「演奏」する曲です。多くの場合、ソロ楽器+オーケストラという編成の曲を指し、その中でも特に三楽章構成の物を「協奏曲」と呼びます。それ以外の構成の作品は「協奏的作品」とも呼ばれます。
音楽家の間ではイタリア語で協奏曲を意味する「コンチェルト」という言葉で言い表すことが多く、これはクラシック以外でもよく使う「コンサート」という言葉の語源にもなっています。元々はラテン語で「競い合う」といった意味でした。
器楽曲の花形!協奏曲のソロ楽器は?
協奏曲のソロ楽器には、非常に多くの楽器が採用されてきました。時代や作曲家による偏りが多いですが、皆さんが知っている楽器のほとんどは協奏曲のソロを飾っていると言って良いでしょう。
特にヴァイオリンとピアノは協奏曲の中でも花形とされ、歴史上数多くの名曲が生み出されました。特にヴァイオリンのための協奏曲の歴史は古く、協奏曲の原型が出来た17世紀のバロック時代には「ヴァイオリン協奏曲」が生み出されました。
ピアノはバロック時代にはまだ発明されておらず、前身楽器といえる「チェンバロ」のための協奏曲が作られています。現代のピアノに近づいた古典派の時代、そしてほぼ完成したロマン派の時代には多くのピアノ協奏曲が作曲されました。
また、トランペット協奏曲やオーボエ協奏曲も古くから作曲されました。他にも、ヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット、ファゴット、ホルン、トロンボーンなど、オーケストラに登場する楽器のほぼ全てに協奏曲が存在します。
協奏曲はいつからあるの?その歴史をざっくり紹介!
西洋音楽の歴史は、合唱曲から始まりました。そこに伴奏楽器としてのオルガンが登場し、ファゴットやトロンボーン、ヴァイオリンなどの古い楽器が加わっていきました。
そのオルガン付き合唱曲の中で、オルガンの役割が伴奏の域を超える作品が現れました。16世紀のルネサンス時代のことです。この楽曲は「コンチェルト」と名づけられ、次第に「コンチェルタート形式」と呼ばれる様式が作られました。
その後、17世紀のバロック時代に器楽曲としての「コンチェルト=協奏曲」が登場します。18世紀の古典派の時代には楽器性能と作曲技術の向上により、協奏曲は大きく発展しました。
19世紀のロマン派の時代にはリスト、パガニーニといった超絶技巧の名手が数多く誕生し、彼らが自身の技術を最大限に生かすよう、自分自身で非常に難易度の高い協奏曲を作りました。
一方でショパンやシュトラウスなど、よりロマンティックなサウンドの協奏曲を作る作曲家も現れ、協奏曲の形式は自由になっていきました。
協奏曲なのに無伴奏?カデンツァとは
協奏曲にはしばしば「カデンツァ」と呼ばれるセクションが挿入されます。これは奏者の技術や楽器の性能を示すために置かれ、ほとんどの場合無伴奏で即興的に演奏されます。
カデンツァが挿入される場所は曲によって様々ですが、クライマックスに置かれることが多いようです。また、オーケストラによる序奏(=前奏)に続いてカデンツァが演奏される場合もあります。
「即興的に」と書きましたが、協奏曲の場合、カデンツァは作曲家によって楽譜に書かれている場合がほとんどで、厳密な意味では「即興」ではありません。無伴奏なので、オーケストラによるテンポなどの制限を受けず、ある程度自由に演奏できる、という意味で「即興的に」であると言えます。
なお、同じ「カデンツァ」という言葉がオペラにも存在しますが、こちらはかなり自由に演奏されることが多いです。歴史的にある程度の定型があり、その上で歌手が自身の技術に合わせてアレンジできるという点で、協奏曲の「カデンツァ」とは異なります。
ソロ楽器が2つ!?ドッペルコンチェルトとは?
少し変わった協奏曲の形式に、「ドッペルコンチェルト」というものがあります。日本語で「二重協奏曲」、つまりソロ楽器が2つあるんです。
古くはバッハによる「2つのヴァイオリンのための協奏曲」があり、その後も「ヴァイオリンとチェロ」「フルートとヴァイオリン」「ピアノとヴァイオリン」「ヴァイオリンとヴィオラ」「クラリネットとファゴット」など、様々な組み合わせで作曲されました。
この形式の最大のメリットは、1つの楽曲の中での楽器の組み合わせの幅が広がるということです。使用できる楽器の組み合わせが増え、サウンドの幅が広がり、より複雑な構成で作曲することが可能になりました。
現代の協奏曲!その意外なソロ楽器とは?
作曲家たちは、新しい楽器が発明される度に、その楽器の魅力や性能を生かした協奏曲を作曲してきました。それは20世紀のクラシック音楽、いわゆる「現代音楽」というジャンルにおいても同じです。
20世紀には多くの電子楽器が発明されました。例えば、楽器自体には手を触れず、楽器から伸びるアンテナに手を近づけたり離したりすることで音を奏でる「テルミン」という楽器があり、この楽器のための協奏曲「テルミン協奏曲」(1945年)も作曲されています。
また、戦後日本の作曲家・武満徹の作品「ノヴェンバー・ステップス」も、編成としては協奏曲と呼べます。これは日本の伝統楽器である尺八と琵琶による「二重協奏曲」のスタイルで書かれています。
スタイルと楽器だけ見ると「和楽器を用いた伝統的協奏曲」ですが、音の長さを指定しない表記や、音符そのものを書かず図形で音楽を表現した「図形楽譜」など、非常に現代的な手法をもって作曲されました。
この他にも、ドラム缶を改造して作る「スチールドラム」や、「マラカス」、「ハーモニカ」などの通常クラシック音楽に用いない楽器を用いた協奏曲、さらには「タップダンス」を用いた「タップダンス協奏曲」という曲も存在します。もはや楽器ですらありませんね。
協奏曲についてまとめてみた!
いかがでしたでしょうか?意外と知らない協奏曲のことをまとめてみました。気になる情報はありましたか?
大きなホールがある都市では、有名アーティストによる協奏曲の演奏会は珍しくありません。また、時期次第では、コンクール優勝者による協奏曲の演奏なども行われており、そこでは若い才能を間近に感じることもできます。
最近では、インターネットを通じて歴史的な名演も気軽に視聴できるようになりました。お時間ある方は是非ホールで生のサウンドに触れて見てください。忙しい方はインターネットで古今東西様々な協奏曲を検索してみてください。きっとお気に入りの1曲を見つけられますよ。